3.11東北地方太平洋沖地震での福島原発事故以来原子力発電所が順次停止し、夏冬の需要ピーク期の電力供給が綱渡り状態となっています。
この状況を受けて環境アセスメントを迅速化することで、火力発電所の建設期間短縮を目指す動きが報道されています。
http://jp.reuters.com/article/JPpolitics/idJPTYE88O03120120925
http://www.nikkan.co.jp/dennavi/topix/nkx20121218qtka.html
これまで3−4年程度かかっていた環境アセスメントを、既存発電所の建て替えであれば1年強に、新設であっても極力短縮するよう検討が進められているようです。
(環境アセスメント迅速化の工程比較、PDF形式)http://www.env.go.jp/policy/assess/5-3thermalpower/thermal_h22_2/mat_2_2-3.pdf
なお環境アセスメントが終了して火力発電所の建設を開始しても、稼働開始までは最短でも3年はかかるようですので、アセスメント迅速化が実現したとしてもこの先数年は電力供給の綱渡りが続くことは変わりません。(自民党政権が原発再稼働を進めれば話は変わりますが)
環境アセスメントって何?
今までもニュースで耳にしたことはありましたが、「環境アセスメント」という手続きが具体的に何をしているのかを少し調べてみました。
検索したところ、経済産業省のサイトに火力発電所の環境アセスメントの書類が公開されています。
http://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/thermal.html
自分の地元の発電所等いくつかの書類をぱらぱらと見て、大まかなイメージを掴みました。
以下のような評価項目があります。
- 事業特性
- 設置の場所、燃料の種類、出力
- 排出される気体汚染物質の種類、量
- 冷却水の取水量、水温上昇値
- その他用水、排水、騒音、工事、交通等
- 地域特性の把握
- 大気環境の状況
- 水環境の状況
- 土壌・地盤の状況
- 地形・地質の状況
- 動植物の生息または育成、植生及び生態系の状況
従来の環境アセスメントでは、各季節毎に変化する気候、動植物の状況の通年変化をきちんと調査する必要があるため、これら項目の現況調査を1年間かけて行っています。
現況調査前の準備段階で半年、現況調査で1年、その結果をまとめて最終的な認証まで2年で計3−4年の期間がかかっていました。
現況調査の簡略化による環境アセスメント迅速化
環境アセスメント過程のうち法律で定まっている手続き部分は短縮不能ですが、その他の部分、特に1年かけていた現況調査を大きく簡略化することが検討されています。
具体的には、対象区域内の重要な動植物種の既存の調査結果があるならばそれを流用する、あるいは大気質・水質の予測手法の簡略化を行うようです。
私はこのような分野には知識がないので素人考えになりますが、以下のようなリスクが考えられるのではないでしょうか。
・天然記念物とされる貴重種が新しく棲みついて営巣していたような場合、その棲息環境を気づかずに破壊してしまう
・簡略な水質予測法のために、通年の現況調査をすれば特定できた局所的な水質の著しい劣化あるいは温排水による水温上昇を見落として漁業被害を起こしてしまう
実際には電力会社等の事業者も慎重に手続きを進めると思うので、これら事態が実際に起こる確率は低いとはおもいますが、リスクがあることは想定できます。
原発停止に伴って火力発電所建設を急ぐことのリスクが、さほど大きくはないといえ存在することは考慮しておくべきだと考えます。