生物物理計算化学者の雛

主に科学に関する諸々を書き留めています。

超臨界水の構造

高温高圧条件での水の超臨界状態をシミュレートしたMD動画を作成しました。(温度400℃、密度0.3g/cm^3)
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超臨界水とは何か?

液体の水を加熱していくと常圧条件下であれば沸点100℃で水は沸騰して気体の水蒸気になり、水蒸気の体積は液体の水と比べ1000倍以上大きくなります。
沸点は圧力を上げると上昇する、つまり水蒸気に圧力をかけると水に戻って体積を小さくしようとする傾向を示すので、高圧力条件下では100℃以上の温度でも水の状態を保つようになります。

この温度と圧力のバランスによって水か水蒸気のどちらの状態をとるのかは決定されるのですが、臨界点と呼ばれる条件(温度374℃、圧力22MPa(220気圧))を上回る高温・高圧条件下では水でも水蒸気でもない状態:超臨界状態をとることが知られています。

この動画の
・水&水蒸気 → 超臨界水 1:10-
・超臨界水 → 水&水蒸気 2:20- (こちらの方が見てわかりやすい)
を見ていただけるとわかるのですが、超臨界水は水と水蒸気が均一に混ざり合ったような状態となっています。

私の動画で示したように、通常の水は水分子間で水素結合ネットワークを形成しており、各分子は3〜4本の水素結合を周囲の水分子との間に形成しています
それに対し超臨界水では水素結合ネットワークは弱くしか形成されておらず、個々の水分子の水素結合は0〜2本となっています

このように水素結合ネットワークが弱いことが超臨界水の強い反応性に重要であることが、超臨界水中での反応シミュレーションによって報告されています。
産総研:超臨界水中の特異な化学反応の機構を解明