株式投資に関するブログをいろいろ見て回っていたところ、興味深い記事に遭遇しました。
ここで紹介されているアメリカの会社コルゲート・パルモーリブ(Colgate-Palmolive Co.、以下CL社と表記)は日本での知名度はありませんが、石鹸や洗剤などをを扱う多国籍企業です。
業績も極めて堅調であり、過去25年間にわたって増配を継続している「配当貴族銘柄」にもリストアップされているほどです。
優良企業と言ってよいCL社ですが、そのバランスシート(貸借対照表)を見ると、元ブログ記事にもあるように、実は「債務超過」になっています。
YAHOO Finance に掲載されている貸借対照表の株主資本のところを見ると、下図のようになっています。
Yahoo Finance より株主資本の部分を抜粋、赤字はブログ主による追記
見ての通り、2015年12月期の Total Stockholder Equity (株主資本 計)は -299,000 千ドル(約-320億円)となっており、帳簿上は完全な債務超過になっています。
4月末に発表された最新の四半期決算ではさらに債務超過額が増大し、株主資本は -370,000千ドル(約-390億円)まで膨らんでいます。
債務超過になった理由ですが、決して赤字がかさんで債務超過になったわけではありません。
Retained Earnings(過去の利益の累積)とほぼ同額の Treasury Stock (自社株、金庫株)が存在することから、自社株買い(と配当金)により株主へと利益のほぼ全額を還元しているためだとわかります。
日本の上場企業であれば、ほとんどの場合「債務超過=倒産、あるいは上場廃止」なので、このような「債務超過の優良企業」が存在するという情報には非常に驚かされました。
冷静に考えてみると、毎年黒字を計上し、順調に利益を上げ続けることが可能であることが期待できる企業であれば、少々の債務超過など問題にはならないことは理解できます。
日本でも、公務員や一流企業などの安定した収入を見込める職についている人であれば、長期の住宅ローンを借りて「債務超過」の状態になってでも住宅を購入することは十分に一般的であることに対応していそうです。
ただし、日本の企業に関しては、バブル崩壊後の貸し剥がしや景気低迷の経験があったために、「赤字に転落したときに倒産せずに耐えるためには、内部留保をいくら溜め込んでも足りるか分からない」といった不安が強くあるようで、企業も利益を溜め込み続けているように思われます。
これが、以前まとめた「企業が貯金をし続けている(借金を返し続けている)」という話につながっています。
masa-cbl.hatenadiary.jp
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以前の記事でも書いたように「誰かの借金は誰かの資産」という関係が成立していますので、社会全体で見れば「政府、企業、家計」のどれかが借金を背負う必要があります。
この観点から言えば、債務超過になってまでも資金を社会に還元するCL社は、だれかが負わなければならない負債の負担を積極的に負っているわけであり、極めて大きな社会貢献をしている企業だと感じます。
CL社のように債務超過になるまで資金を放出せよとまでは言わないまでも、日本でももうすこし企業がお金を社会に還元してくれるような環境ができあがってくれることを望みます。