生物物理計算化学者の雛

主に科学に関する諸々を書き留めています。

論文の査読ではデータ捏造などの不正を見つけることはあまり期待されていない

STAP細胞の件で同じ写真の使いまわしや、他の文献からのコピペ(剽窃)の疑惑が持ち上がっています。

この点について査読で見つけられなかったのかという声がありますが、正直なところ査読ではこのような不正のチェックはさほど重視されていません。



実際にNature の査読ポリシー(Peer-review policy : authors & referees @ npg)には以下のような記述があります。
(私なりの日本語直訳を併記、正確には元の英文を参照してください)

If the manuscript is deemed important enough to be published in a high visibility journal, referees ensure that it is internally consistent, thereby ferreting out spurious conclusions or clumsy frauds.
(対象とする論文が)雑誌に掲載するに値する重要性があると認められるならば、査読者は誤った結論(spurious conclusions)や不器用な不正(clumsy frauds)を探し出した(ferret out)上で、論文が首尾一貫していることを確認する。

あからさまにわかるような不器用な不正は査読で見抜きたい。

Journal editors do not expect peer review to ferret out cleverly concealed, deliberate deceptions.
巧妙に隠された意図的な虚偽(cleverly concealed, deliberate deceptions)を査読者が見つけ出すことは期待しない。

ただし、巧妙な不正を見抜くことは無理。

A peer reviewer can only evaluate what the authors chose to include in the manuscript.
ピアレビューでは著者らが論文中に選択して記述した内容のみが評価対象となる。

This contrasts with the expectation in the popular press that peer review is a process by which fraudulent data is detected before publication (although that sometimes happens).
これは一般の大衆紙(popular press)において期待されるピアレビュー(虚偽データ(fraudulent data)を見つけ出す作業)とは対照的である。

大衆紙(新聞や雑誌など)におけるピアレビュー(俗に言う裏取りと解釈してよいでしょうね)とは違うと記述されているのは興味深い。


査読に対する私の理解は以下のような感じです。

論文中に記述されているデータ(図、表など)と文章のみを判断材料として、議論が首尾一貫しており、得られた結果から正しい議論、結論を導いているのかをチェックする。
あからさまにわかるミス、不正があれば指摘する。
論文に載っている情報は正しいものと信頼する。
巧妙に仕組まれたデータ偽造、不正を査読により見つけることは期待されていない(そもそも無理である)。


それでも、せめて過去の文献からのコピペ(剽窃)については見抜けるようにしたいところですね。

その作業を査読者がするのはなかなか難しいですので、雑誌の編集者が査読に回す前にコピペルナーのようなソフトウェアを利用して不正なコピペがされていないかは事前にチェックしてほしいところです。

高校生の論文が載った雑誌はまともに査読をしていない疑惑のある論文誌のようです

高校2年生の生徒がインドの査読付き国際数学雑誌に論文が掲載されたというニュースがありました。
http://www.kaijo-academy.jp/press/2014/02/post_722.html

高校生にして査読付き論文を発表できることは極めて異例ですので、この高校生は素晴らしい素質、能力があるものと思います。

特に数学という学問は、若い頃から素晴らしい成果を残す天才的な人がいる分野だと思いますし。
(少しわき道にそれますが、その点化学は経験がものを言う部分が大きい気がします。天才的な能力を持たない私のような凡人でも、なんとか成果をだしていけるのでは・・・と自分に言い聞かせながらがんばっています。)

掲載されたのはオープンアクセス誌

ちょいとどんな論文かみてやろうと思ってサイトにアクセスしたところ
Scientific Advances Publishers
自宅からでも論文のPDFを見れたため、誰でも読めるオープンアクセスなんだとわかりました。

普通の論文誌は年間契約等を結んで代金を支払っている購読者しか読むことができません。
それに対しオープンアクセスの雑誌は、誰でも自由に読むことができる代わりに、投稿者が掲載料を支払う必要があります

そのため、どんな内容の無い論文であっても査読の基準を非常に甘くして、とにかくたくさんの論文を掲載し、掲載料を稼ごうとするオープンアクセス雑誌が乱立しているとされています。

2009-06-13 - かたつむりは電子図書館の夢をみるか

オープンアクセス誌の玉石混淆ぶりが明るみに - バイオ系研究室PC管理担当のメモ


ちなみに今回の論文が載った雑誌Journal of Algebra, Number Theory: Advances and Applicationsでの掲載料は1ページあたり20ユーロ(
Scientific Advances Publishers の7. What are publication charges?
)となっており、今回の11ページの論文で掲載料220ユーロ(3万円強)を掲載料として支払っていると思われます。

当然ながら、まっとうに査読をしているきちんとしたオープンアクセス誌も数多く存在します。
投稿者が投稿時に掲載料を払う必要があるものの、誰でも読むことができることから、研究者以外の一般の方も論文を読むことができるオープンアクセスの方が好ましいと個人的には考えています。
ただし、このような商業主義で掲載料目当てのオープンアクセス誌が乱立しているという残念な現実があることも事実なのです。

今回の論文の雑誌は掲載料目当ての出版社から出ている模様

掲載料目当てと思われるオープンアクセス誌の出版社がまとめられたリストが公開されています。
LIST OF PUBLISHERS | Scholarly Open Access


今回高校生の論文が載った雑誌の出版社はScientific Advances Publishersですが、見事にこのリストにのっていました。

f:id:masa_cbl:20140308230026p:plain


というわけで、論文が載った雑誌は査読付きとなっていはいますが、きちんと専門家によるまっとうな査読がされたか?という点では極めて怪しいという結論になってしまいます。

実際にまともな雑誌であれば付与されている指標であるインパクトファクター追記:少し強く言いすぎました。刊行されたばかりの雑誌には付与されていませんし、インパクトファクターも1つの判断材料にすぎないです。)も、この雑誌については算出されていませんでした。

さらなる傍証として、この論文の受取日(Received date)は2013年12月31日、そして査読後の改訂、修正完了(Revised)が2014年1月8日となっており、査読による改訂がわずか10日足らずで完了している点が挙げられます。
f:id:masa_cbl:20140308232640p:plain

査読は「雑誌編集部が受け取った論文の内容を確認」、「編集部が査読者を選定」、「査読者が論文を読み、査読コメントを作成」、「編集部が査読コメントを受領し、論文投稿者に渡す」、「論文投稿者は査読コメントに対応して論文を改訂」、「改訂原稿を査読者が再チェック」、「査読コメントが十分に反映されていれば、掲載決定」というプロセスを経る必要があり、10日足らずで終わるとは思えません。

少なくとも私の分野(化学)であれば、どんなに早くても1ヶ月はかかります。
またインパクトファクターが付与されている数学分野のまともな雑誌(Journal of Algebra)の論文をいくつか見てみましたが、Recievedから出版まではやはり数ヶ月以上かかっていました。

さらなるブラッシュアップを経てまっとうな雑誌への投稿を期待

というわけで、高校生が査読付き雑誌に論文を発表したものの、その雑誌はおそらくまともな査読がされていない雑誌である可能性が高いことがわかりました。

この論文の内容にどれほどの価値があるのか、結果が正しいのかは私には判断ができません。

(追記)査読がまともに行われたかどうか疑義がある雑誌に載っていることから、この論文の内容は数学の専門家による査読チェック(新規性があるか、内容は正しそうか等)を本当に受けたのかどうかはかなり怪しいと判断せざるを得ないのです。
誰か数学の専門家の方が論文の内容自体について解説して下さるとありがたいのですが。

ですので是非ともこの高校生には、この論文の内容そのままだと2重投稿になってしまってダメですので内容のブラッシュアップを図った上で、まっとうなインパクトファクターの付与されている雑誌への投稿に挑戦してほしいものです。


推薦入試への箔付けとして掲載料目当てのオープンアクセス誌を利用できちゃう?

大学の推薦入試では全国大会出場、資格取得(英検など)といったわかりやすいアピールポイントがあるとアピールしやすいことと思います。

ある程度の英作文ができるのであれば、そのアピールポイントとして査読付き雑誌に論文掲載!なんてことがまともに査読をしないオープンアクセス誌を利用すればできちゃうことになりますね。

推薦入試を狙っている高校生は是非挑戦してみてください、なんちゃって。
(本気にしちゃダメですよ、場合によってはこういう雑誌に論文が載っていると将来逆に悪く評価されちゃうリスクもありますのでね)


(追記)はてぶ等でいただいたコメントに対応して本文も随時追記しています。

今回論文を発表した高校生を批判しているわけではないんですよ。
実際、高校生が英語で論文をまとめて発表すること自体、極めて素晴らしい結果であることは確かなんです。
ただし、結果的に査読がザルである疑惑がある出版社の雑誌に載せてしまった以上は、元記事にあるように「査読付き国際数学雑誌」に掲載という点をアピールすることには何かと問題があるぞー、と言いたいわけでして。

以前に化学分野ではこんなケースがありました。
茨城の女子高生が快挙! | Chem-Station (ケムステ)
こちらではJournal of Physical Chemistry Aというインパクトファクターのあるまっとうな雑誌に載っており、こちらのケースならば堂々と査読付き雑誌に掲載と胸をはって大丈夫なんです。

※当初の記事タイトルは「高校生の論文が載った雑誌はまともに査読をしていない疑惑のあるオープンアクセス誌のようです」でしたが、オープンアクセス イコール まともに査読をしない と単純に言えるわけではありませんので、「オープンアクセス誌」を「論文誌」に変更しました。

タイトルなりをコピペしてググれば直接論文のページに移動できたのね・・・

以前から文献中にでてきた論文を入手する場合、その雑誌のサイトに行って、過去のアーカイブ一覧に行って、該当する年(year)、巻数(volume)を探して・・・と辿っていました。

例えばここのところ話題沸騰のSTAP細胞の論文であれば

Obokata H. et al., Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency. Nature, 505, 641–647 (2014).

といった具合に引用されています。

以前はこの論文にたどり着くために、Natureのサイトに移動し、Archiveページから2014年の巻数505を探すといった作業をしていました。

しかしもっと単純に、タイトルなどでGoogle検索をすれば、面倒なページ遷移をすることなく直接論文のページに到達できます。

例えば

  • タイトル Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency.
  • 雑誌名、巻数、ページ数 Nature, 505, 641–647
  • 個々の論文に付与されるDOI(デジタルオブジェクト識別子) doi:10.1038/nature12968

のいずれでも探している論文のページがトップに出てきました。


ほんのちょっとした気付きですが、これで研究がより捗りそうです。

他大学での非常勤講師給与が20万を超えたら確定申告をしましょう

2か所以上から給与を受けており、年末調整を受けたメインの職場以外から給与が20万円以上の人は確定申告の義務があります。
No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|所得税|国税庁

私は去年メインで働いている機関とは別の大学で複数の非常勤講師の授業を持っており、非常勤講師の給与が年20万円を超えたため、確定申告の義務が生じたので先日申告をしてきました。


おおよそ非常勤講師の給与は授業1コマ1回で1万円程度であり、授業を1コマをもつと半年間で授業15回、15万円程度の給与になります。

そのため例えば以下のような場合は確定申告が必要になります

  • 前期(4月~9月)2コマの授業 30万円の給与
  • 前期(4月~9月)1コマの授業15万円 + 後期(10月~翌年3月)1コマの授業3か月分(半分)で7.5万円 = 計22.5万円の給与


なお給与収入を受けた会社、大学などの各々の職場からは、翌年の1月中に源泉徴収票が送られてきます。
確定申告の際にはこの源泉徴収票を添付する必要があります。


確定申告により生じるおおよその負担額

確定申告では所得税を計算して納税することになります。

所得税の税率は5%から始まり、収入の増加による累進課税のため税率は40%まで上昇します。
No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁

通常のポスドクの収入では税率は5%~10%程度となりますので、仮に確定申告で20万円の給与所得を申請すれば、おおよそ20万円の給与に対して5~10%の1~2万円の所得税を支払うことになります。
(給与の3%程度は天引きで既に納付されているので、その分は差し引きますが)

また地方自治体(都道府県、市町村)に支払う住民税についても所得税の確定申告をすれば税務署から地方自治体に連絡がいき、翌年の住民税に反映されます。
こちらは住んでいる場所によって税率が異なりますが、私の場合は確定申告による住民税の上乗せは所得税の倍額程度になるようです。

またどの程度の額になるかはよくわかりませんが、年金保険料などの社会保険料も収入額に依存して増加するようです。

確定申告の結果、所得税、住民税、社会保険料が増える分を考えると、非常勤講師の収入の2割程度は差し引かれることになりそうです。


オンラインでの確定申告書作成

国税庁は確定申告書を作成するサイトを公開しています。
【確定申告書等作成コーナー】-TOP-画面

「書面提出」―「所得税及び復興特別所得税の確定申告書」―「左記(給与が1か所の方)に該当しない方」と選択します。
そして「給与所得」の項目に源泉徴収票の内容を見ながら入力することで必要な納税額が計算され、簡単に確定申告書を作成することができます。

税務署への確定申告書提出

作成した確定申告書をプリンタで印刷し、指定されたページに源泉徴収票などの必要書類を貼付して、自分の住所を管轄している税務署に提出します。
管轄の税務署は国税局の所在地及び管轄区域|国税庁概要・採用|国税庁で確認できます。
例えば、愛知件名古屋市中川区に住んでいるのなら、管轄は中川税務署宛になります。

提出期限は3月15日くらい(毎年変わります)ですので、確認してください。

税務署は平日の昼間しか開いていませんが、週末にも確定申告書を受け付けてくれる臨時の確定申告会場も設置されるので、確認してみるとよいでしょう。

確定申告により納税が必要であれば、税務署で確定申告書を提出後に支払うことができます。
また支払用紙を受け取って、後で支払うことも可能です。

税務署への郵送でも大丈夫

初めての確定申告時は不安があったので税務署で直接提出しましたが、2回目以降は提出書類についてもう不安がなくなったので、税務署に確定申告書を郵送して済ませました。

郵送先は管轄の税務署の住所でOKです。

A4書類が入る封筒を用意し、印刷した確定申告書や源泉徴収表を貼付した紙、税金の納付書送付依頼書(銀行口座情報を書く)などの必要書類をすべて封入し、普通郵便として郵便局や郵便ポストで出すだけです。
郵便事故が不安な人は、簡易書留くらいで出しておくと安心できます。

うまく受理されれば、4月中くらいに「指定口座から税金を口座振替で引き落とします」という内容のハガキが届きます。

メールサーバの .imap.index が壊れたことに由来するメール送受信エラー対応

Linuxメールサーバの挙動がおかしかったため再起動をしたところ復旧したのですが、特定ユーザのみメール送受信がタイムアウトしてしまいうまくいかない現象が起きました。

メールサーバは Postfix + Dovecot による構成です。


メールのログファイル /var/log/maillog を見たところ、pop3, imap接続の両者で以下のエラーメッセージが出力されていました。
(メールサーバ名 mailserver、ユーザ名 user1)

Mar  3 14:02:31 mailserver imap-login: Login: user1 [::ffff:192.168.1.2]
Mar  3 14:05:01 mailserver imap(user1): Timeout while waiting for release of shared fcntl() lock for index file /home/user1/mail/.imap/INBOX/.imap.index

Mar  3 14:16:05 mailserver pop3-login: Login: user1 [::ffff:192.168.1.12]
Mar  3 14:16:46 mailserver pop3(user1): Timeout while waiting for release of shared fcntl() lock for index file /home/user1/mail/.imap/INBOX/.imap.index


どうやら .imap/INBOX/.imap.index ファイルがおかしいようです。
(再起動した際に.imap.indexファイルが壊れた可能性がありそうです)


.imap.index ファイルは存在しなければ dovecot により再生成されるという記述がありましたので、エラーの原因となっている.imap.indexファイルを削除しました。

その結果、送受信のタイムアウトエラーは解消し、user1も無事メールサーバを利用できる状態に復旧することができました。

windows版VMD(32bit)の利用できるメモリ量を2GBから4GBに増やす

分子動力学計算結果の可視化などに用いられるプログラムVMD - Visual Molecular Dynamicsは Linux版、MacOS版、Windows版 が配布されています。

f:id:masa_cbl:20140301222454p:plain

なんだかんだでWindows版が一番使いやすいのですが、残念ながらWindows版は32bit版であり、64bit OSであっても利用できるメモリ上限が2GBに制限されてしまっています

そのため、大きなデータを読み込むとメモリ不足に由来すると思われるエラーで落ちてしまいます。

f:id:masa_cbl:20140301222004p:plain
メモリ不足によるエラーメッセージ winvmdは動作を停止しました


根本的には64bit版が公開されるのを待つしかないのですが、ちょっとした操作をすることで利用できるメモリを倍の4GBまで増やすことが可能です。

参考:64bit Windowsを前提とした32bitアプリケーション延命法 ~ LAAオプションで32bitアプリケーションのメモリ不足問題を解消 | OPTPiX Labs Blog

VMDプログラムへの4GB化パッチの実行

まず下のサイトから4GB化を実現するパッチプログラムをダウンロードします。
NTCore's Homepage

このプログラムは実行プログラム先頭部のヘッダ情報を書き換えて LARGEADDRESSAWARE のフラグをONにするものです。
このフラグにより64bit OSで実行される場合、使用できるメモリ量を4GBまで増やすことができます。
(VMDに限らずすべての32bitプログラムにこのプログラムは適用可能です)

そしてこの4GB化パッチプログラム 4gb_patch.exe を解凍、起動し、インストールしたVMDの実行プログラム(デフォルトのままインストールしていれば "C:\Program Files (x86)\University of Illinois\VMD\vmd.exe")を選択します。
f:id:masa_cbl:20140301223231p:plain

この操作によりvmd.exeファイルのヘッダ部にLARGEADDRESSAWARE のフラグが追加され、利用できるメモリサイズが4GBに増加します。

雪の重みで潰れたTSUTAYA花園インター店の屋根に積もった雪の重さを計算してみた

TSUTAYA花園インター店が雪の重みで潰れたことが話題になっています。


積雪によりどの程度の重さの雪が屋根に乗っていたのかを計算してみることにしました。


f:id:masa_cbl:20140215205414p:plain

まず Google map の建物の写真から、屋根の面積を見積もりました。

長方形型の建物であり、横に40m、縦に25m程度だとわかりますので、面積は40m×25m=1,000平方メートル(m^2)になります。

積もった雪の高さ(深さ)ははっきりとはわかりませんが、ざっくりと30cm(0.3m)だとします。

すると屋根の上に積もった雪の体積は 1,000m^2×0.3m=300立法メートル(m^3)となります。


あとは雪の密度(比重)が必要です。
積雪対策資料によると、雪の比重は0.2以上に設定する必要があり、安全性を考慮する場合は0.5として見積もるようです。

雪が大量に積もって圧縮されると密度は大きくなりますが、数十cm程度であればさほど圧縮はされていないと考えて、比重0.2(密度は0.2トン/m^3)だと仮定します。

結局、この建物の屋根の上の雪の重さは 体積300m^3×密度0.2トン/m^3 = 60トンとなりました。


乗用車プリウスの重量が1.8トン程度なので、60/1.8=33.3台のプリウスが屋根の上に載った状態になっていたわけです。

普段積雪がほとんどない地域では、屋根がこのような大雪の重さに耐えられるようには設計されていないため、かなりリスクがある状態になっているわけですね。