生物物理計算化学者の雛

主に科学に関する諸々を書き留めています。

「原子炉を事前に停止すれば確かにリスクは下げられるという話」の感想戦

先日のブログ記事は、2日足らずで約3万という大量のアクセスを受けることができました。

masa-cbl.hatenadiary.jp


私のような原子炉の素人が少し調べて書いた程度の記事がここまで話題になってしまうとは、完全に想定していませんでした。
(熱量を水量に変換するところの計算ミスもやらかしていましたし・・・)

頂いたコメントやツイッターなどのSNSでの反応を見ると、私が把握していなかった送電線や原子炉の特性など、素人が書いた故に不足している部分も多々あったようで、申し訳ありません。

この点については、多くのコメントにあった「このブログの記述がそのまま信用できるかは分からないけれど・・・」という読み方をしていただけると、ブログを書く立場としては気が楽になります。

また、「明らかに間違ってるぞー!正しくはこうだ!」 というポイントに気付かれた専門の方は、是非ブログやSNSなどで正しい情報の発信をお願いいたします。


数多くの人が冷静に記述された判断材料を欲していることは、世間の良識を反映しており嬉しいことです

数多くのコメントの中から、私が最も共感したコメントは

・メリットとデメリットをきちんとまとめたこんな記事が読みたかった
・マスコミは結論ありきでなく、このように論点をまとめた記事を書いてほしい

といったものでした。

これぞ正しく私も欲しているものです。

それ故に、私個人が原発に対してどういう感情を持っているのかについてはあえて触れないようにし、とにかく科学的事実だけを書くようにしました。

このようなコメントの数はかなり多く、きちんとした科学的知見や論点を把握した上で議論をしたいと望む良識ある人々が数多くいることが分かり、とても嬉しく感じました。

是非マスコミの方には、原子炉、電力、地震といった様々な分野の専門家の意見を集約して、今回の「川内原発を止めるべきか否か」のような単純に答えが出せない課題への「冷静な判断材料」を提供していただけることを希望いたします。


なぜ地震大国日本に原発があるのか―天然資源に乏しいから

「地震などの自然災害が多発する日本に、なぜこんなに原発があるのか」という意見もありました。

1つの答えは、「日本はエネルギー資源に乏しいから」になります。石油欠乏が第二次大戦の要因の1つになったくらいですし。

この点は昔の記事でも議論したところです。

masa-cbl.hatenadiary.jp

石油に頼ればオイルショックにやられ、原発を使えば福島第一原発事故が起き・・・日本という天然資源を自給できない場所に住む以上は、ノーリスクということはあり得ず、どこかでリスクをとるトレードオフは避けられないのです。

太陽光発電などの再生可能エネルギーはまだまだ開発途上で、主力として使えるのは未来の話ですし。


やはり原発は「感情的に怖い」のか・・・

今回の記事をきっかけに川内原発停止に関する反応を見てみましたが、少なくない人々は「とにかく怖いから原発を止めてほしい」という意見を持っているようです。

私個人は、日常生活には極めて多数のリスクが存在することを科学的知識として持っていることもあり、必要以上に放射能のリスク「だけ」を恐れることがないように心がけています。

例えば、日本人の主食であるコメには健康リスク上無視できない濃度の無機ヒ素が含まれており、スウェーデンの食品庁が「コメの摂取制限」を勧告しています。

blog.goo.ne.jp

この事実をもって「コメなんて食べちゃいけない!」と極端に走る必要はないわけでして。

放射能に対して強い不安を感じる人は、身の回りにある様々な「リスク」について知識を得ることで、放射能もその1つとしてうまく受け入れられるようになるというのは1つの方策かな、と考えています。

環境リスク再考 化学物質のリスクを制御する新体系

環境リスク再考 化学物質のリスクを制御する新体系

お母さんのための「食の安全」教室

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原子炉を事前に停止すれば確かにリスクは下げられるという話

熊本を中心とする九州地方での地震多発を受けて、川内原発を停止すべきとする意見が持ち上がっています。

www.asahi.com

この件を受けたツイッターやブックマークコメントを見ると、「原発を止めても核燃料が入っている以上はリスクは変わらない」という内容のコメントが散見されます。

実際のところ、もし原発に甚大なダメージを与える事象が予見されているのであれば、事前に原発を停止しておけばかなりリスクを下げることができます。

運転停止後の原子炉崩壊熱は原発停止後に急速に減少する

原子炉は核分裂による膨大な熱エネルギーにより蒸気を発生させ、発電機のタービンを回すことで発電を行っています。

この核分裂を制御棒の操作により停止させることで、原子炉の運転は停止されます。

しかしながら、ここが原子炉の難しい部分になるのですが、核分裂停止後の核燃料は、核分裂により蓄積された放射性同位体の崩壊に由来する崩壊熱が発生し続けます。

この原子炉崩壊熱の冷却に失敗すると、福島第一原発で生じたような炉心溶融といった事故に繋がるわけです。

この崩壊熱が時間の経過によってどのように減少するのかは以下のサイトに説明されています。

d.hatena.ne.jp

また愛知淑徳大学の親松教授が以下のような論説を公開しています。

福島第1原子力発電所の原子炉崩壊熱の見積もり(PDFファイル)

この親松教授の論説の崩壊熱の時間経過の図に加筆したものを下に示します。

f:id:masa_cbl:20160420124659p:plain

条件として、原子炉の電気出力は福島第一原発の2-4号炉の出力に近い 800 MWe を想定しています。

原子炉の熱効率は三分の一程度なので、熱出力はその3倍の 2,400 MW(メガワット)になります。これが原子炉運転中に核分裂により生成される熱エネルギーになります。

2,400 MW といってもピンときませんが、これを冷やすためにどれだけの水が必要かを計算してみると、20℃の水を100℃に沸騰させて冷却すると想定すると、1秒間に3.75 7.1トンの水が必要になります。
(実際に運転中の原子炉が使う冷却水は毎秒数十トンのオーダーです)

そして、制御棒の操作により核分裂を停止させると、その直後に発熱量は運転時の約6%相当の 154 MW 程度(水に換算すると毎秒 0.24 0.46トン = 毎秒 240 460 kg)に激減します。

さらに6時間後には1%程度の 25 MW (水に換算すると毎秒 40 74 kg)に、そして1日経つと0.4%程度の 10 MW (水に換算すると毎秒 15 30 kg)と崩壊熱は急速に減少します。

このように、崩壊熱の下がり方と冷却に必要な水の量を確認することで、原子炉を安定して冷却するために必要な水の量のイメージをつかむことができます。

(2016/4/20追記)コメントで指摘がありましたが、お恥ずかしいことに水量への換算計算にミスがありました。
ジュールとカロリーの換算で正しくは X / 4.2 の部分が X / 4/2 となっていたため、水量が二分の一程度に過小評価されていました。
図についても値を修正しておきました。

また、水は液体のまま100℃まで吸熱させて取り除くという想定をしており、水が蒸発時に生じる潜熱(約540 cal/g)を考慮していません。
水を全て蒸発させると想定して潜熱を考慮すると、必要な水量はおよそ八分の一になります。

前もって原子炉を停止しておけば、冷却機能を失っても対処に時間をかけることが可能

このように、崩壊熱は運転停止直後の6%から1日の間に0.4%まで十五分の一に大きく減少します。

言い換えると、仮に冷却水が供給不可能になるという不測の事態が生じる場合は、1日前に停止してあれば冷却すべき熱量は1ケタ小さく抑えることができ、燃料棒の過熱による原子炉の破損まで長い猶予時間を得ることができます。

この猶予があれば、原子炉への冷却水の供給を回復させる作業を行う、あるいは周辺住民の避難などに費やすことができる貴重な時間を得ることができます。

以上の技術的観点からは、川内原発直下に原子炉を破損させるほどの大地震が生じる蓋然性が高いと判断するのであれば、事前に原子炉の運転を停止することに十分に意義があります。

ただし、川内原発を止めることにもリスクはある

ただし、現実には川内原発を停止することにもリスクはあります。

下の九州電力データブック2015の128ページから、発電所および送電網の図を引用し、追記したものを示します。
http://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0051/6814/data_book_2015_all_l.pdf

f:id:masa_cbl:20160419004907p:plain

この図から想定できるシナリオとして2つ考えられます。

1. 南北を繋ぐ送電線は熊本を経由しており、仮に川内原発を停止した後に熊本での再度の大地震が起こり送電線が切断されると、九州南部の電力量が不足して大規模停電が生じる可能性がある

2.川内原発以上の発電量を有する新大分火力発電所付近で大地震が発生した場合、新大分火力発電所が停止すると川内原発を止めていた場合は電力量が不足して、九州全体に大規模停電が生じる可能性がある

他にも、仮に川内原発を停止するのであれば、電力安定供給を目的とする休止火力発電所再開のために九州電力社員のマンパワーが使われることになり、熊本などへの支援に割ける人員にも影響がでることになると考えられます。

以上の原発の稼動、停止両者が内包するリスク、コストを考慮しつつ、総合的な視点から川内原発の停止をどうするのかを考慮する必要があると考えます。



追記しました

masa-cbl.hatenadiary.jp

C言語の全角文字コメント行がコンパイルエラーを起こすことがある

エラーを引き起こすコメント行

とあるC言語のプログラムを Windows 上の Visual Studio 2008 で編集・作成し、完成したソースコードを Linux マシンにコピーし gcc でコンパイルしてデータ処理を実行という流れで作業を行っていました。

その際に、ある全角文字を含むコメント行が存在するとエラーが生じるという現象に遭遇しました。

このエラーを再現するプログラムは以下のようなものです。

#include <stdio.h>

int main(void)
{  
    int n = 10;

    // n の値により分岐可能
    if(n > 5){
        printf("Large\n");
    }else{
        printf("Small\n");
    }
    return 0;
}

このソースコードは、Visual Studio上では何の問題もなくコンパイル、実行できます。

しかしながら、Linux の gcc によりコンパイルを行うと

main.c:10: error: expected identifier or ‘(’ before ‘else’
main.c:13: error: expected identifier or ‘(’ before ‘return’
main.c:14: error: expected identifier or ‘(’ before ‘}’ token

というエラーが出力されてしまい、コンパイルに失敗します。

そして、このプログラムの7行目の「// n の値により分岐可能」というコメント行を削除すると、Linux gcc でもこのエラーは解消され、コンパイル実行が可能となりました。

原因は2バイト目が \ になってしまう「Shift-JISのダメ文字」でした

この原因を探るためにバイナリエディタでソースコードを調べてみたところ、コメント行の最後に「\」(バックスラッシュ、または円マーク)に相当する文字コードが存在していました。

C言語では行末に \ が存在すると、その行の改行が無視されるということを思い出し、試しに最後の「」の文字を削除したところ、Linux の gcc でも問題なくコンパイルに成功しました。


私が使っている環境での Visual Studio 2008 は、作成したプログラムのソースコードを Shift-JIS で保存するようになっています。
そして、「能」のShift-JISコードを調べると「94 5C」であり、2文字目は確かに半角文字「\」の文字コード 5C になっていました。

Shift-JIS には「能」のように2バイト目が \ 記号と同じバイト列になっており、いろいろと問題を引き起こす文字があると以下のサイトに説明されています。

Shift_JISのダメ文字 - fudist

まさにこれが、今回の問題を引き起こしていました。

この問題の回避は、Shift-JIS以外の文字コードを使う、あるいはコメントの最後の文字として「ダメ文字」以外を使うことで可能です。


このコメント行末の \ については、コンパイラによって単に \ を無視するのか(Visual Studio の場合)、あるいは \ を適用して次の行もコメントとして扱ってしまうのか(Linux gcc の場合)で挙動が分かれているようです。

「なぜか消すと動かないコメント」ネタも再現可能

プログラミング世界で時々聞くネタとして // このコメントを消すと動かないので消しちゃダメ といった摩訶不思議なコメントが書かれているプログラムがあるというネタがあります。

このネタは以下のソースコードを Shift-JIS で保存して、Linux gcc でコンパイルすることで再現可能です。

#include <stdio.h>

int main(void)
{  
    int n = 10;

    // n の値により分岐可能
    //   この行のコメントを消すと動かないので、消しちゃダメ!
    if(n > 5){
        printf("Large\n");
    }else{
        printf("Small\n");
    }
    return 0;
}

このソースコードでは // n の値により分岐可能 の行末の \ により次の行がコメントアウトされますが、次の行に// この行のコメントを消すと動かないので、消しちゃダメ! というコメントがあるおかげでこの「Shift-JISのダメ文字」の問題を回避できています。

そして、このコメントを消してしまうと、次の if(n > 5) { の行がコメント扱いされてしまい、コンパイルが通らなくなります。


それにしても発見に手こずり、原因を見つけるのも厄介なエラーでした・・・。

「経済政策で人は死ぬか?」は政治家全員に読んでほしい本です

前々から気になっていた本を読み終えました。

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

過去の経済不況(最近のものだとサブプライムローンに端を発したリーマンショック、あるいはそれ以前だとソ連崩壊後のロシアや1990年代後半に生じたアジア通貨危機など)の際に、各国政府が行った政策を一種の臨床試験とみなし、主に政府支出を削減する「財政緊縮策」と、あえて不況時に政府支出を増やす「財政刺激策」を比較し、何が起きたのかを調査した成果が読みやすくまとめられています。

財政緊縮策を行った国では、多くの人々が仕事を失い、健康を損ない、死んだ。そして経済は回復しなかった。

財政緊縮策を採用した国々(ソ連崩壊後のロシア、アジア通貨危機後のタイ、インドネシア、そしてリーマンショック後のギリシャ)では、IMFからの融資を受ける際の条件として、とにかく国の財政を建て直すという名目で政府はあらゆる支出を削ることを迫られました。

そしてその結果は惨憺たるもので、財政緊縮による予算削減の結果、不況で職を失った人々に対するサポートが削られ、蚊が媒介する伝染病やエイズなどを予防する予算も削られ、結局のところは多くの人々が健康を損ない、そして万を超える単位の人々が死ぬ結果に終わりました。
つまり平均寿命の低下や、自殺者の増加という形で国民の「血」が流されたわけです。

この犠牲で経済が立ち直ったのであればまだ救われる部分があるのかもしれませんが、実際には職を失い生活保護のような福祉に頼りっぱなしになる、あるいは病気で働くことが不可能になった人々があふれることで、税収は減り福祉予算は増大し、国家財政も経済状況もボロボロの状況が長期間に渡り継続するという有様となりました。

財政刺激策を行った国では、失業者は仕事や家を保つことができ、死者は増えなかった。そして経済は早く回復した

一方で財政刺激策を採用した国(アジア通貨危機後のマレーシア、リーマンショック後のアイスランド)では、あえて失業者対策などの予算支出を増大させました。

当初は支出する予算が増える分の予算調達の困難さはあったものの、失業者対策を手厚く行うことで失業者の数を減らしたり、新たに病気にかかる人の数を増やすことなく保つことが可能でした。

その結果、不況による税収の落ち込みが最低限に押さえ込まれ、新たに病気になる人も少なく済み、景気も国家財政も緊縮財政策をとった国よりも早く回復することができたわけです。

政治家の先生方全員に読んでほしい本です

この本は、国の経済政策がいかに国民全体の幸福(健康状況、雇用状況)に影響するのかを理解する上で極めて良い内容となっていますので、是非政治家の先生方全員に読んでほしいと願います。

「日本は借金が多いから、福祉予算を削るべきだ」という主張は様々な政治家の人が口にするところですが、そのような緊縮政策が何をもたらすのか、少なくとも「副作用」としてどれだけ人々の健康、命を犠牲にするのかをキチンと理解して頂きたいところです。

その上で、せめて予算を削るにしても、失業者に対する支援措置、あるいは生活保護のような社会的弱者に対する支援を削るような愚行は避けてもらえれば・・・と願うところです。

Haswell Xeon E5 最上位CPU Xeon E5-2699 v3、E5-2697v3 を比較

Haswell世代のデュアルソケットCPUである Xeon E5-2600 v3 シリーズの最上位CPUである Xeon E5-2699 v3 Xeon E5-2697 v3 を実際に使ってみる機会があったので、ベンチマークをとってみました。

前世代である v2 世代の最上位である Xeon E5-2697 v2 も含めてスペックは下表の通りです。

CPU コア数 定格周波数(GHz)
Xeon E5-2699 v3 18 2.3
Xeon E5-2697 v3 14 2.6
Xeon E5-2697 v2 12 2.7

前世代のCPUよりも定格周波数は下がっているものの、CPUコアは2~6コア増えています。


それぞれのCPUを2CPU搭載したマシンで、AMBER 12 pmemd による古典分子動力学計算(原子数~23,000、周期境界条件)によるベンチマークを実行しました。(Xeon E5-2699 v3 であれば 18コア× 2 CPU で36スレッド並列計算)

また以前に記事にした手法
CentOSにおけるintel CPU ターボブースト動作の確認 - 生物物理計算化学者の雛
により全コア使用時のターボブースト周波数の確認も行いました。

f:id:masa_cbl:20150116230200p:plain
Xeon E5-2699 v3, E5-2697 v3, E5-2697 v2 のベンチマーク結果


定格周波数と比較すると、全コア使用時のターボ周波数はv2世代では +0.3 GHz だったところ、v3世代では +0.5 GHz とより大きく上昇するようになっています。

周波数×コア数によりざっくりと性能を見積もると、定格であってもv2世代と比較すると +11.2%、+27.8% 向上しており、ターボ周波数ではそれ以上の +20.6%、+40.0% となっています。

実際のベンチマーク計算完了までの計算時間も確実に短縮されており、計算時間の逆数を見るとv2世代よりも +28.7%、+37.0% と大きく向上しています。


なお性能が向上したことと引き換えとなったのか、v2世代よりも消費電力は増加していました。

CPU ベンチマーク実行時消費電力(W)
Xeon E5-2699 v3 470
Xeon E5-2697 v3 443
Xeon E5-2697 v2 336


それにしても、CPU1つに18コアが搭載されるようになるとは・・・コア数が3ケタになる日もそう遠くないのかもしれませんね。

「消費税は安定税収」は国家財政(財務省)の甘え

安倍首相は消費税 8%→10% の増税を1年半延期することを決断し、平成26年11月21日(金)の衆議院本会議にて解散されました。
議事経過 第187回国会(平成26年11月21日)


消費税を予定通り引き上げるべきとする財務省に代表される勢力に対抗するため、消費増税延期の信を問うための解散総選挙を決断したと私は理解しています。


消費税は安定した税収を確保できるため、財務省にとっては好都合だが・・・

財務省は消費税を引き上げる理由を以下のサイトで説明しています。

このサイトの図(下図)を見ると分かるように、消費税は景気の上下に左右されず、安定した税収をもたらしてくれます。

f:id:masa_cbl:20141130003207p:plain
各税金ごとの税収の推移(財務省ウェブページより引用、加筆)


消費税を引き上げるべき第一の理由は、高齢化に伴う社会保障を広く薄く負担するためとなっています。

さらにもう1つの理由として景気動向に関わらず安定した税収が見込める点をメリットとしてあげています。

実際に一番最近のリーマンショックがあった2008年からの景気後退期にも、所得税、法人税が大きく下がっている一方、消費税収はほとんど一定でした。

この安定した税収は財務省が予算を組むにあたり、極めて便利であることは事実でしょう。


景気が悪くなって赤字になった企業、失業した人からもからも容赦なく取り立てられるのが消費税

景気が悪化する時期には、売り上げが落ちることで利益が減り、多くの企業が赤字転落し倒産します。
それに伴いリストラによる首切り、あるいは勤めていた会社の倒産による失業者も増加します。

その結果、黒字の会社から徴収する法人税、給与所得から徴収する所得税は減ることになります。


別の見方をすると、赤字になった企業は法人税を免除され、失業した人は所得税を免除されるとも言えます。

つまり、法人税および所得税に関しては景気悪化により苦境に陥った企業、個人に対して、国が間接的に補助を出すような一面があるわけです。
(経済を安定化させる負のフィードバック機構の一種ですね)


その一方、消費税ではこのような苦境に陥った企業、個人からも容赦なく徴収されます


景気が悪くなっても安定した税収を確保できる分、国(財務省)は楽をできるわけですが、その負担は赤字企業、失業者にのしかかるわけです。

経済的苦境に陥った人は最悪の場合自殺に追い込まれるわけですので、そのような人々に対する支援を考慮することなく消費税を上げることは人を殺すことに繋がります。

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策



消費税は国家財政(財務省)の甘え

産経新聞の記事によると、財務省幹部がなかなかに辛らつなお言葉を発していたようです。

「社会保障費が膨れ上がる中、消費税率がこんなに低いのは、国民を甘やかすことになる。経済が厳しくても10%に上げるべきだ」

国民の生活、命を守るべき国家機関の中の人の言葉としてはなかなかになかなかです。

景気動向をにらみつつ、適切に収入、支出のバランスをとるべき国家財政の運営者をこれ以上消費税で甘やかす必要はないでしょう。



ちなみに個人的には財源としてはインフレ率がある程度上昇するまで、国債を発行し日銀に引き受けさせる財政ファイナンスをすればいいじゃないと考えています。

この件についてはいずれ機会があればそのときに。

早稲田大学は裁判を覚悟の上ででも小保方さんの博士号を剥奪してほしい

本日早稲田大学より、小保方さんの博士号は取り消し規定に該当しないという結論が調査委員会により得られたという報告がありました。

理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーが2011年に早稲田大大学院で博士号を取得した論文について、早大の調査委員会(委員長・小林英明弁護士)は17日、文章や実験画像の流用は誤って草稿が提出されたことが原因で、博士号の取り消し規定に該当しないとの調査報告書をまとめた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140717-00000090-jij-soci

いくつかのニュースを見て得た自分なりの理解は以下の通りです。

  • 調査委員会の報告
    • 小保方さんは博士論文の最終稿でなく、執筆途中の草稿を誤って博士論文として提出した
      • コピペ部分は単なる下書き部分であり、最終稿では差し替える予定の部分であり悪意は無かった
    • ただし博士論文の出来そのものには問題点が極めて多く、きっちりと博士論文を審査していれば博士号授与は極めて難しかったはず
      • 博士号審査過程、制度には極めて重大な問題が存在している
    • 早稲田大学の学則によると、博士号剥奪の要件は「不正の方法により学位の授与を受けた事実が判明したとき」であるが、小保方さんにはこの要件は当てはまらない
      • 仮に博士号剥奪を強行すれば、法に触れる可能性が高い
  • 早稲田大学としての対応
    • 調査委員会の報告をこれから精査し対応を検討する
    • 最終的な博士号剥奪などの処分の権限は早稲田大学総長にあり、調査委員会の結論は総長の決定を拘束しない

裁判を覚悟の上ででも博士号剥奪の決断を願う

まっとうに研究を行っている科学者から見れば、小保方さんの研究の進め方、論文の書き方は性善説的によく言ったとしても「杜撰」の一言であり、擁護できる部分がないと感じることと思います。

これは理研や早稲田大学の上層部も同様だと信じたいのですが、裏ではいろいろなことがあるようで、すんなりと小保方さんを切り捨てることができないようです。

今回の早稲田大学の調査委員会でも、法的には小保方さんの博士号を剥奪することは難しい、つまり剥奪を強行すれば裁判沙汰になりかねないという結論が出てしまいました。

それでも私個人の意見は「小保方さんの博士号は剥奪すべき」です。
このtogetterまとめには極めて共感できます。
早稲田大学の学位取り消さない決定に揺れるTL - Togetterまとめ

博士号剥奪をしないとすれば、早稲田大学はいい加減な論文を書く人物にも博士号を与えてしまう「ディプロマミル」同様の大学だという評価がついてしまいます。
(さらには国際的には日本で取得する博士号の価値が色眼鏡で見られる結果になってしまうリスクもあります。)

せめて「不正が発見された、あるいは不正が十分に疑われるような博士論文に対しては博士号剥奪という厳正な対処をする」という意思表示を早稲田大学はにはしていただきたいと願います。
仮に「一旦剥奪したものの裁判沙汰になり、敗訴して小保方さんの博士号を認めざるを得ない&金銭的な出費を強いられる」状況になったとしても、「博士論文に重大な疑義があったが剥奪の意思を見せなかった」場合に比べれば早稲田大学の評価を保つことはできるのではないでしょうか。

調査委員会の結論は総長の決定を拘束しないということですので、早稲田大学総長には英断を期待しています。