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生物物理計算化学者の雛

主に科学に関する諸々を書き留めています。

デンマークで若いキリンがなぜ殺処分されたのか

デンマーク、コペンハーゲンの動物園がキリンを殺処分し、解体の様子を公開、さらに死骸をライオンに食べさせるというニュースがありました。

CNN.co.jp : 殺処分のキリン解体を一般公開、死骸はライオンの餌に デンマーク


この動物園の行動に対して抗議がヒートアップしています。

CNN.co.jp : キリン処分の動物園に殺人予告、是非巡る論議も白熱 - (1/3)


殺処分されたキリンは2歳とまだ若いマリウス(Marius)という名の個体で、なぜ殺処分されるのかは日本語のニュースには「キリンの同系交配防止のため」とさらっと説明されているだけだったので、興味をもって調べてみました。

動物園ウェブサイトの説明

なぜ若いキリンを殺処分する必要があったのかを、コペンハーゲン動物園(Copenhagen zoo)は自らのウェブサイトで説明しています。

Why does Copenhagen Zoo euthanize a giraffe?

箇条書きされている質問と回答の要旨は以下の通りです。
やはり動物の専門家である動物園だけあって、様々な面から検討を行い、最終手段として安楽死を決定したことがわかります。

なぜ健康なキリンを安楽死(euthanize)させるのか?

当動物園のキリンは国際繁殖プログラムに所属しており、生まれた個体は同系交配(inbreeding、遺伝的に近い個体同士の交配。競走馬シミュレーションのダビスタを思い出しますね)による健康障害のリスクを避るため、遺伝子の異なるキリンの群れに移動させることにしている。

ところが今回のキリン個体の遺伝子は、ヨーロッパ中の繁殖プログラムで飼育されているキリン遺伝子プール中でありふれた代表的なもので、同系交配にならないような相手が見つからなかったため、安楽死が決定された。

避妊はできないのか?

当動物園ではキリンを自然に交配させており、繁殖活動に及ばないようにキリンの行動を24時間束縛し続けることは極めて難しい。

(さらに他の記事 Why did Copenhagen zoo decide to kill Marius the giraffe? | World news | theguardian.com によると)
キリンに避妊手術をするのも難しい。なぜなら手術のためにキリンに麻酔をかけると、倒れる際に首の骨を折ってしまうリスクがあるためだ。

繁殖プログラムに参加していない動物園への移動はできないのか?

繁殖プログラムに参加する動物園は規則を守る必要がある。
ヨーロッパでの繁殖プログラムは欧州動物園水族館協会(European Association of Zoos and Aquaria (EAZA)、300以上のメンバーが加盟)に所属する動物園で行われている。

EAZAの規則として、動物を売却してはいけない、科学的知見に基づかなければならない、動物の福祉を保証する必要があることが決まっている。

(さらに他の記事 Why did Copenhagen zoo decide to kill Marius the giraffe? | World news | theguardian.com によると)
うかつに繁殖プログラムに所属していない団体にキリンを譲渡すると、より劣悪なサーカスあるいは個人に転売され、キリンを苛酷な環境に追い込んでしまう可能性がある。

殺処分せずに自然に戻すことはできないのか?

動物を自然に戻す(reintroduce)することは容易ではない。動物を自然に放す以上は生き残れる可能性があることを確認する必要がある。
それにキリンを放す地域コミュニティとの連携も必要となる。
そのため自然に戻すためには極めて注意深い下準備が必要となる。