原発事故以来、再生可能エネルギーの一種として風力発電所が注目されています。
実際に太陽光発電と並んで固定価格買い取り制度(Feed-in Tariff, FIT)による買取対象となっています。
今回は風力発電にどの程度の費用がかかり、どの程度の利益がでるものなのかを試算してみました。
2,000kWの大型風車での試算
洋上風力発電の調達価格に係る研究会とりまとめ報告書には、1基2,000kWの大型風車(例えば2013年3月に稼働開始したウィンド・パワーかみす第2洋上風力発電所ではローター直径80m)についての陸上風力の数字が載っています。
この風車について、資本費(風車を建てるのにかかる費用)は30万円/kW、運転維持費は0.6万円/kW/年、設備利用率(平均して定格出力の何%の電力を発電するか)は20%となっています。
よって、2,000kWの風車1基の建造費は 2,000kW×30万円/kW=6億円、1年間の運転維持費は2,000kW×0.6万円/kW/年×1年=1,200万円となります。
1日の発電量は2,000kW×24h(時間)×20%=9,600kWhとなり、1年間では9,600kWh×365=3,504,000kWhとなります。
2,000kW風車の年間収入
平成25年度の風力発電電力の買い取り価格は20kW以上の大型風車については23.1円/kWh(20年間)となっています。
平成25年度の再生可能エネルギーの固定買取価格が発表されました | 法規と条例 | DOWAエコジャーナル
よって発電電力のすべてを売却すれば、2,000kW風車1基1年間で3,504,000kWh×23.1kW/h=80,942,400円(約8,100万円)の収入を得られます。
2,000kW風車の年間費用
一方で支出としては、1年間の維持費1,200万円に加え、建造費6億円の減価償却費用(建造費を何年間かけて回収するか)がかかります。
法定耐用年数は17年(
http://www.office-kodaira.com/contents/data/pickup/20110713pickup/
)となっていますので、単純に建造費の1/17を17年間費用計上すれば、減価償却費用は毎年 6億円/17年=35,294,118円(約3,500万円)になります。
2,000kW風車の年間利益
収入から費用を差し引く事で利益を計算できます。
1~17年目は減価償却費用も考慮して、1年間の利益は 売上8,100万円 - 維持費1,200万円 - 減価償却3,500万円=3,400万円(投資額6億円の5.6%) となります。
18年目以降は減価償却費用がなくなる(建造費は17年間で回収済み)ので、1年間の利益は 売上8,100万円 - 維持費1,200万円=6,900万円(投資額6億円の11.5%)と一気に倍増します。
FITによる買取は20年間ですので、20年間で得られる累積利益を計算すると、約3,400万円×17年+約6,900万円×3年=約7.8億円 になります。
風車を建てるための初期投資6億円により、20年間で投資額の130%(7.8億円)の利益が出る計算です。
(注意:建造費6億円は減価償却費用として回収されていますので、最終的な採算としては利益にかかる税金を考えなければ6億円が20年後に6億円+7.8億円=13.8億円(元手の230%)に増える計算になります)
考慮すべき様々なリスク
以上の試算のように、FITによる固定価格買取のおかげで風車を順調に運用できれば確実に大きなリターンを得ることができることがわかりました。
それでも考慮すべきリスクは多々あり、たとえば
- 風況の見積りを誤り、全然風が吹かない場所に建ててしまい、設備利用率20%を達成できないリスク
- 台風、落雷等の自然災害、あるいは工事・設計ミスによる故障多発等により風車を20年間運用できないリスク
等があり、完全にリスクフリーな商売というわけにはいかない点は注意が必要です。