生物物理計算化学者の雛

主に科学に関する諸々を書き留めています。

edX 7.00x 生物学入門 Week1 の内容

先週登録したedXのコース「7.00x Introduction to Biology - The Secret of Life」の講義第一週目(Week 1)を受け終わりました。

Lecture 1: Introduction to Biology(生物学入門)

最初のレクチャーでは「この授業で何を学習するのか」が解説されました。

  • 近年の生物学の進歩を背景に、抗がん剤等の新たな医薬の開発が実現している
  • 生物学の知見は犯罪捜査、科学的な歴史調査、農業に活用されている
  • 生物は多様性に富んでおり、分子レベル(molecules)、細胞レベル(cells)、生物個体レベル(organism)といった多層性がある
  • 生物進化の歴史:45億年前地球誕生、37億年前原核生物(Prokaryote)誕生、15億年前真核生物(eukaryote)誕生・・・
  • 生物学の構成要素:生化学(biochemistry)は生物をすりつぶして構成要素を調べる、遺伝学(genetics)は変異体を作って機能を調べる

Lecture 2: Biochemistry of Life (生命の生化学)

次のレクチャーでは、生物学の物理・化学的基礎である生化学の講義がなされました。

  • 酵母から酵素(enzyme)を取り出して生気説(vitalism)を否定する役割を果たした1907年ノーベル化学賞受賞者Buchnerの仕事の紹介
    • 従来、発酵による砂糖からアルコールへの変換は「生きている酵母」にしか行えず、生命には特殊な力があるとする生気説が考えられていたが、そうではなく酵母から抽出した物質によって発酵と同じ反応を起こせることを示した。
  • 細胞の構成要素
    • 原子組成は H原子63%、O原子24%、C原子10%、N原子14%、P原子0.2%、S原子0.1%以下 その他微量のCa, Cl, K, Na, Mg, Mn等
    • 分子組成は 水80%、水以外の乾燥重量で タンパク質50%、炭水化物15%、脂質10%、核酸(DNA,RNA)15%
  • 共有結合
    • 物理・化学の知見の紹介:C-H、C-C、C=Oといった共有結合の解説
    • 共有結合1本のエネルギーはおよそ80kcal/mol、これは常温熱ゆらぎのエネルギーの大きさ0.6kcal/molより大きく、共有結合は切れない
    • 結合の数は C原子4本、N原子3本、O原子2本、H原子1本・・・
  • 非共有結合
    • 極性分子間には水素結合が生じる 水素結合の強度は5kcal/molと共有結合より弱い
    • 正負の電荷をもつ分子間にはイオン結合が生じる
    • あらゆる原子間にはvan der Whaals(ファンデルワールス)力が働く 強さは1kcal/mol程度と極めて弱い
  • 脂質とリン脂質
    • 脂質(リン脂質)は親水性(hydrophilic)部位と疎水性(hydrophobic)部位を持つ
    • 水中の脂質は球状に集まったミセル(micell)や脂質二重膜(lipid bilayer)を形成する
  • エネルギー保存分子:ATP、炭水化物
    • ATPは負電荷をもつリン酸3つが共有結合でつながっており、大きなエネルギーを保存している
      • ATPは生物学において「エネルギー通貨」と呼ばれる
    • 糖はさまざまな形で重合し、連結の仕方によりエネルギー保存用のグルコース、植物の形を保つセルロース等を形成する

この授業の「非共有結合(NON-COVALENT BONDS)」の水素結合解説のパートで私がYoutubeにアップロードした動画が使われました
このような教育的目的で使っていただけるのは大変光栄で嬉しく感じます。