先日、日本の借金額が1,000兆円を突破したことがニュースになりました。
初の1000兆円突破=「国の借金」膨張止まらず―1人当たり792万円・6月末
私はこの国の借金増加自体はさほど大きな問題ではないと認識しています。
参考:政府の負債という「幽霊」を恐れる愚
これを機に、先日のブログ記事
masa-cbl.hatenadiary.jp
で集計した金融負債額データをもとに今後どうなるのか考察してみました。
前回記事のおさらい:家計の貯金 = 企業の借金+政府の借金+海外投資
前回記事の図2つを簡単におさらいします。
この図では各年度での金融資産・負債差額、つまり貯金から借金を引いた差額が示されています。
家計はこの差額がプラスであれば貯金(銀行預金、保有国債等)が借金(住宅ローン等)よりも多いことを示します。
その家計の貯金分を借り入れているのが非金融法人企業(銀行・保険業以外の民間企業)、一般政府、海外(マイナスは海外への投資額を表す)の3主体です。
誰かの負債=誰かの金融資産 なので 家計の貯金総額=企業の借金+政府の借金+海外投資 のバランスが成り立っています。
この図は非金融法人企業、一般政府、海外の借金を示しています。
ここ十数年間は非金融法人企業の借金が減り、一般政府の借金と海外投資が増えていることがわかります。
1995年〜2011年の金融資産・負債差額を線形フィットして平均的な金融資産変動を見積もる
時系列データから未来を予測する最も単純な方法は、過去のデータを直線でフィットして傾き(=毎年の増加・減少額)を見積もることです。
企業の借金額がピークを打った1995年から最も新しい2011年までのデータから傾きを見積もった結果を示します。
政府の借金は毎年30兆円ずつ増加、海外への投資は毎年10兆円ずつ増加
図は示しませんが、家計の金融資産は毎年20兆円ずつ増加、全主体を合計した金融資産(負債)総額は毎年20兆円ずつ増加しています。
1995年を境に変化した金融資産フロー
1995年以前の推移をみると、家計の金融資産が増えた分だけ企業の借金が増えるというシンプルな流れになっています。
それが1995年以降になると、企業が資金の出し手側に回り、家計と企業が年20兆円ずつ金融資産を増やすor借金を減らし、30兆円を政府が、10兆円を海外が吸収する流れになっています。
私の意見としては緊縮財政によって政府の借金を減らすことには反対なのですが、その根拠がこの資金の流れです。
1995年以降に家計と企業が貯蓄を増やす(借金を返済する)ことができてきたのは政府がその分借金を増やしてきていたためだとこの図から理解できるためです。
ここでもし国が無理やり借金返済に回ったとすると、家計や企業が金融資産を増やすことは不可能になり、その分家計or企業の資産が減る、つまり家計収入や企業利益が減り日本経済全体が縮むしかなくなると推測できます。
今後はどうなる? 企業が資金のメイン供給源になり、家計と政府が資金を借り手になる?
それでは今後はこの資金の流れはどうなっていくのでしょうか?
現状がこのまま続くのであれば国の借金が1,000兆円突破したとする冒頭のニュースのように国の借金がどんどん増えることになりますが、その分を家計と企業の金融資産が増えることでカバーできるため破たんはおこらず、この流れはしばらく続くことは十分に考えられます。
ただし家計の貯蓄増加は高齢化の進展により止まることが推測されますので(給料をもらう現役世代が減り、貯金を取り崩して生活する高齢者が増えるため)、いずれ家計は貯蓄を減らす、つまり資金の借り手側に回ると推測します。
企業は日本国内の需要は少子化・人口減のために減り続けることを考えると借金をして投資する必要性はないため、引き続き借金返済を継続し、さらに海外への投資を継続すると推測します。
そしていずれは借金を完済し、貯蓄超過の状態にまで突入するかもしれません。
(企業の借金は 1995年 710兆円 → 2011年 350兆円と16年間で半減しています。このペースが続くと2020年代後半には借金完済まで到達する計算になります)
政府の借金は現状通り増え続けるのではないでしょうか(この政府の部分については根拠無しです)
なお、アベノミクスが大成功すれば企業は1995年以前のように再び借金を増やして投資を行うようになり、昔のような資金の流れが復活する日が来るのかもしれません。
実際に2005年、2006年の2年間に限ってみれば不動産流動化等の企業投資が活発に行われた好景気下にあり、企業の借金が増え、政府の借金が減る傾向が出ていますので、これが再現されるのかもしれません。
今後の日本経済はどうなるのか、こんな具合に予想しながら眺めていきたいと思います。